今回は、第89回アカデミー賞で三部門を受賞した注目の話題作、映画「ムーンライト」についてご紹介していきたいと思います。
この作品は、マイアミの黒人コミュニティに暮らす孤独な少年の成長を描いたヒューマンドラマで、少年の成長にともなって、幼少時代・青年時代・成人後と3場面に分けて描かれています。
主人公と準主人公の少年については、それぞれの時代を全く別の人物が演じています。それぞれが全く異なる人物なのに、まるで一人の同じ人物のように感じるのは、この作品が不思議な力を持っているからであり、この作品の魅力の一つだと思います。
それでは、早速あらすじを三場面に分けてご紹介していきたいと思います。
Contents
1、「ムーンライト」あらすじ “little(幼少時代)”
舞台は、アメリカ・フロリダ州のマイアミ。そこには黒人が大半を占めるコミュニティがありました。その中で、シャロン(通称:リトル)という少年は暮らしていました。
シャロンは、麻薬依存症の母ポーラと二人暮らし。彼は、薬のことだけしか考えていないポーラに育児放棄され、孤独を感じながら生活していました。
その上、身長が低いことと内気な性格、また歩き方が内股だということを理由に学校の同級生からもいじめられていました。
シャロンには唯一、幼馴染みのケビンという親友がおり、彼だけが心の支えでした。
ある日、いつものように同級生から追いかけられ、公団住宅の空き家に隠れていじめっ子が去るのを待っていたシャロン。
しかし、その日はいつもと違うことが起きました。
空き部屋に身を潜めていると、ドンドン!とドアを叩く音が。
同級生なのか、それとも怖い大人なのか、と恐る恐る近寄ってみると、いきなりドアが崩れました。そこにいたのは、その地域の麻薬売人のトップ、フアン。彼は、見た目のいかつさとは裏腹に、心優しい男性です。
フアンは、怯えている小さな青年シャロンを心配し、彼を連れ出しました。
なんと、シャロンが隠れていた場所は、麻薬の売人がうろうろしている危険地帯だったのです。
シャロンはフアンから質問されても全く口を開きません。フアンはシャロンを放っておくことができず、自宅に連れて帰りました。
自宅に着くと天使のような心を持つフアンの恋人、テレサが料理を振舞ってくれました。ようやくシャロンの口から自分の名前と住所を聞き出すことができ
たので、シャロンの自宅まで送り届けることに。
自宅には心配した母ポーラの姿がありました。しかし、ポーラはフアンに対してあまりいい態度をとりません。
その後も、フアンはシャロンを気にかけ、食事に行ったり、家に招いたりと面倒を見るようになり、シャロンもフアンを実の父親のように慕い始めました。
ある晴れた日、フアンはシャロンに泳ぎ方を教えようと海に連れていきました。
フアンの大きな腕の中ではじめて海に触れ、あっというまに泳ぎをマスターしたシャロン。
その後、浜辺でフアンは自らの過去を語り始めました。
彼がキューバからの移民だったこと、幼い頃、月明かりに美しく体が青光りしたことから、ある老婆に「ブルー」と呼ばれていたこと、そして、裏社会で生きざるを得なかったことなど。
彼は最後に、強い眼差しでシャロンにこう語りかけました。「自分の道は自分で決めろよ、周りに決めさせるな。」
シャロンが家に戻ると、母ポーラは相変わらず荒れていました。
ポーラが、フアンにいい顔をしないのは、ポーラはフアンの客だったからです。
ある夜、フアンが街の麻薬売買エリアに立ち寄ると、そこには愛人とともに興奮状態のポーラがいました。フアンがシャロンのことを話すと、麻薬の元締めをしているにも関わらず、子育てに口出しするフアンに苛立ち、父親気取りするな!と暴言を吐きます。
それからまもなく、シャロンもフアンが自分の母親に麻薬を売っていたことを知りました。フアンに直接聞き、彼が認めると、そのままフアンの元を去ってしまいました。
2、「ムーンライト」あらすじ “chiron(青年時代)”
それから数年後、シャロンは青年になりました。
学校ではあいかわらず「ゲイ」であることを理由に、テレルという派手なグループからいじめられる日々が続いていました。
その一方で、幼馴染のケビンとの関係は良好に続いていました。
フアンは亡くなってしまったものの、テレサはシャロンに食事を作ったり、家に泊めたりと愛情深く世話をしてくれています。
母ポーラの薬物依存はますます激しくなり、お金に困ってついに売春にまで手を出すようになりました。彼女は、シャロンがテレサからもらったお小遣いまで取り上げます。
ある日、シャロンは売春婦をしている母から、今日は家に帰ってくるなと言われます。学校が終わり、テレサの元へ泊まりに行く途中で、いつも通り、テレルのグループにからかわれ、テレサの家へも行けなくなりました。
行く場所がなくなったシャロンは、海辺に移動し、月明かりの中浜辺に腰を下ろしました。
すると偶然、親友のケビンと出会い、二人でドラッグを楽しみます。二人で静かに話していましたが、そのうちいい雰囲気になり、二人はキスをして慰め合うのでした。
シャロンが家に戻ると、ポーラは横になっていました。彼女は、シャロンに「愛している」と言い、そのときだけは愛情のある優しい母親のように見えました。
翌日、学校でケビンに近づこうとするシャロンですが、テレルの差し金により拒まれます。テレルは、ケビンにいじめの儀式に参加するよう強制し、シャロンを殴らせます。ケビンが殴り終わると、テレルのグループがシャロンを袋叩きのように殴る蹴るの暴行を始めました。警備員が現れたことでなんとか助かったシャロンですが、暴行について聞かれても何も答えません。
翌日登校したシャロンは、無防備なテレルを後ろから椅子で殴りかかりました。
そのまま取り押さえられ、パトカーへ乗せられてしまいました。
そのときのシャロンは、悲しみ、憎しみ、諦めというような不思議な表情でケビンを見つめるのでした。
3、「ムーンライト」あらすじ “black(成人後)”
大人になったシャロンは、服役を終えるとアトランタに移住し、服役中に知り合ったツテで麻薬売人となっていました。
彼は、見違えるほど体を大きく鍛え上げ、金歯をつけ、高級車を乗り回す、まさに裏社会で生きる黒人になっていたのです。
母のポーラは、麻薬更生施設に入りました。
毎晩、母から会いたいと電話がかかってきます。
その日も夜に電話がかかってきたので、名前を見ずにとるとなんと、電話をかけてきた相手は昔の親友、ケビンからでした。
自分が料理人として働いているマイアミの店に会いにきて欲しいとのことでした。
翌日、シャロンはポーラの更生施設に会いに行き、彼女がこれまでの過去の失態を謝ると二人は和解しました。
そしてその後、シャロンはケビンの働いている店に向かったのでした。
ケビンは、手料理でもてなし、ワインを片手に二人はお互いに近況報告しました。
レストラン閉店後、夜が遅くなったため、シャロンは海沿いにあるケビンの自宅にとまることにしました。そこは波の音が心地よく響く場所で、思わずあの浜辺を思い出すシャロン。
家に入ると、微妙な沈黙が流れました。
そして、シャロンは、ケビンへの想いを語り始めました。
「俺の体に触れたのは、生涯でただひとりだけ」と。
数年ぶりに親友に戻ったふたりは、肩を寄せ合い結ばれます。
場面が変わり、幼いシャロンが月明かりの中、青く美しく輝く姿に。
何かに気づいたシャロンが後ろを振り返る表情で、物語の幕は閉じます。
4、「ムーンライト」感想
アカデミー賞受賞の作品だったので期待値高めで見たのですが、
超えてきました!!!!!!
この作品は、黒人社会の独特の文化、貧困、麻薬中毒、LGBTなどの社会問題が複雑に絡み合いながら、それとは真逆のシンプルに美しい映像の中で淡々と展開するような不思議な映画でした。
特に、印象深かったところは、主人公の苦境とは対照的な映像の美しさです。
家庭環境が悪く、学校でもいじめられ、自分がゲイであることにも気づきはじめた少年の苦境と、青く晴れ渡ったフロリダの美しい風景とのギャップは、この映画の魅力の一つだと思います。
もし自分がシャロンのような苦境に立たされたらどうなるのか、、、そう考えただけで辛いです。シャロンは一見、弱い少年に見えますが、本当は強い少年だと思います。
また、シャロンが大人になって、かつて父親のように慕っていたフアンのようになっているシーンも個人的に好きでした。
現代社会では、仕事がつらくて、人間関係がつらくて、とにかくつらくて命を断つ人がいます。一方で、貧困でも、家がなくても、母親に愛情をもらえなくても、学校でいじめられても、流れに身を任せ一生懸命生きている子供もいます。
このような現代社会の様々な問題を考える良い機会になり、
また、今、自分が悩んでいることがちっぽけに感じることができる作品だと思いました。
ただ単に感動するのではく、見終わってからからじわじわと良さが感じられる、すごく素敵な作品でした。
5、まとめ
今回は、映画「ムーンライト」のあらすじと感想をご紹介しました。
期待値高めで見ても、ハードルをあげても、絶対に超えてくる作品です!
主人公の苦境とフロリダの映像美の対照が本当に素敵なので、
この記事を読んで少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ「ムーンライト」を見ていただければ嬉しいです!
やっぱり名作ってすごく心に入ってくるものがあって、見終わった後の満足感が違いますよね~・・☆
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